月別アーカイブ: 2015年11月

VOL.6リスケの出口とは「貸出条件緩和債権」からの卒業を意味する

今 視聴率絶好調の「下町ロケット」 皆さんはご覧に椿なっていますか?
私のクライアントには「町工場」の方が多いので、かなり思い入れを込めながら見ております。そこで「白水銀行」の手のひら返しの対応に対して、佃社長は毅然とした対応で「出直して来い!」と一喝したシーンは爽快感を覚えました。

よく、銀行は「雨の時には傘を貸さない」と言われますが、まさにその通りです。
お客さんの本質を見ようとせず、目先の事情だけで物事を決めてしまうことが良くあります。(私も銀行員時代はそうだったかもしれません)
今の仕事は私だけではなく、皆さんも「雨の時には雨傘、晴れの時は日傘まで貸せる」サービスを心掛けていきたいものですね。

今回のお話は、「リスケの出口とは『貸出条件緩和債権』からの卒業を意味する」についてです。
リスケジュールを脱出する方法には、様々な方法がありますが、借入銀行を変えないでリスケの出口を見つける場合には、借入金の「原使途」との関係が切り離せません。原使途と返済期間との関係性を考えるにあたって「貸出条件緩和債権」という銀行独特の考え方がリスケの出口の障害になることを念頭においておく必要があります。
「貸出条件緩和債権(以下 貸条)」とは、『金融機関が債務者の自力の経営再建や支援を図ることを目的として、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄、債務者の有利となるようなその他の取り決めを行う貸出金』と定義されています。

この表現だと抽象的で分かりづらいかもしれませんが、一般的なリスケジュールで金融機関と合意している貸出金は該当しません。では、どのようなケースが「貸条」に該当するのかについては、
1)担保でフルカバーされていない貸出金
2)金利が十分にとれていない貸出金
このふたつが主に挙げられています。

具体的に言いますと、当初の借入を設備資金として10年で借りていましたが、5年目でリスケジュールを実行したとします。経営基盤が安定してきたので、当初から7年目に10年での分割返済に切り替えたいと申し出します。
この結果、当初の貸出金の返済年数は17年に延びてしまうことになります。これは、「貸条」のなかの「債務者に有利となるような貸出金」とみなされてしまうのです。この状態を脱出するには、上記のふたつの条件(フルカバーか金利充足)のうちひとつを満たす必要があります。
担保については、処分価値でのフルカバーになるので、時価の80%掛け目の価格が借入金と同額になる必要があることから、担保余力がない限りは難しいことになります。

一方金利については、どのような水準を充足していればよいのか?がテーマになります。

◆基準金利は債務者の信用格付によって変わってくる
「貸条」を卒業するための基準金利とは、債務者の信用区分に応じた金利かつ貸出期間に応じた金利の両方を満たす必要があります。債務者の信用区分に応じるとは、正常先であれば高くはありませんが、要注意先以下に区分されれば、高い金利が必要になります。また貸出期間が長くなれば、当然金利も高くなります。

基準金利は金融機関によって違いますが、おおよその目安として
正常先であれば1.5%~2.5%ほど
要注意先以下であれば 3.0%~
が、最低でも充足すべき水準になります。

つまり、信用格付けが正常先にランクされる前に、リスケの卒業を慌ててしまうと、高い金利を提示されてしまうことを覚えておいていただけたらと思います。まずは、自己の財務内容を正常先に改善させることが、何よりも優先事項になります。

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■■編集後記

「人」の縁とは本当に不思議なもので、世の中とは狭いものだなと最近感じております。
先日の講演でご参加頂いた方が、4年前に開催した講座での所長先生の事務所から独立された方がいらしたり、先日は本の執筆依頼が急に連続で来たり…などなど。

色々と地道に活動をしていると、見ている方はちゃんと見ているんだなと感じたり、人のご縁は繋がっているものだなと感じております。

今年も残り少なくなってきましたが、1日1日を大事に過ごしていきたいと改めて感じて おります。


徳永 貴則
(株)スペースワン 代表取締役 金融税理士アドバイザー講座主催
写真_s
大和銀行(現りそな銀行)にて、都内を中心に主に法人融資の新規開拓業務を行う。その後、本店融資部・審査部門を歴任。2,000社以上の融資に携わる。これらの経験を活かし㈱スペースワンを創設。銀行融資のコンサルをはじめ、事業再生や経営改善のアドバイスも行っている。
また、金融税理士アドバイザーの専任講師としても活躍中。

(株)スペースワン
http://financial-advise.net/
金融税理士アドバイザー講座
http://finance-zeirishi-adviser.com/

 

 

VOL.5リスケジュールにおける「プロラタの原則」は絶対です

702cf178002e099b16dc8cd31cad29b3_s複数の銀行と取引があり、リスケジュール(以下リスケ)を実施する場合、元金の返済額を決めるにあたって「プロラタ」の言葉を銀行から良く聞かれると思います。この原則を守っていないと、取引行からの不満が出て、リスケ実施されなくなります。
今回は、「プロラタ」の意味をきちんと理解して頂いて、銀行交渉にどのように望めばよいのかをお話させて頂きます。

◆プロラタとは「残高按分の法則」である。

複数の銀行と取引がある場合には、残高も各行バラバラなはずです。例えば下記のようなケースがあったとします。(リスケ時の直近の全ての借入残高を示しております)

A銀行  50百万円(50%)→毎月500千円
B銀行  30百万円(30%)→毎月300千円
C銀行  20百万円(20%)→毎月200千円

合計で100百万円の借入があったとします。そこで、残高のシェアを算出し、毎月の返済額を按分するのが「プロラタ返済」といいます。例えば、毎月1百万円の返済原資があると、上記のように残高シェアで按分していきます。なお、このプロラタは「残高プロラタ」と呼ばれており、有担保、無担保関係なく、単純に残高で按分する方法です。無担保部分だけで按分する方法は「信用プロラタ」と呼ばれております。(今回は信用プロラタの詳細のお話は省略します)

◆リスケのタイミングは全行一致が原則

会社の資金繰りが厳しくなって、銀行の元金返済の資金を確保できなくなってしまって、頼みやすい銀行に返済を当面ゼロにさせて欲しいとお願いをし、他行の返済は通常通りでやってしまった場合には、各行で返済の不平等が生まれてしまいます。かつ、この不平等返済の期間が長くなると、リスケ時に各行の意見調整をするのが、より困難になります。

◆リスケのタイミングが一致しない場合に銀行から言われることは

リスケのタイミングが一致していない場合に、先行してリスケを実施した銀行は、後発の銀行に対して返済していた月数分を先行銀行にも返済してほしいとのお願いをするケースがあります。
そこまで、細かいことを言わないケースもありますが、さきほどもお話した通り、リスケの正論はタイミングを全て一致させることにありますので、タイミングの不平等分の返済は揃えることになることをよく覚えておいてください。そうでないと、不一致分の月数分の返済額を用意できないで、いつまでも全行一致のリスケが成立しないケースもよく見られます。

リスケは
① プロラタつまり金額を按分すること
② 開始時期を揃えること

この2点が必要条件になることを改めて認識しておいてください。

 


徳永 貴則
(株)スペースワン 代表取締役 金融税理士アドバイザー講座主催
写真_s
大和銀行(現りそな銀行)にて、都内を中心に主に法人融資の新規開拓業務を行う。その後、本店融資部・審査部門を歴任。2,000社以上の融資に携わる。これらの経験を活かし㈱スペースワンを創設。銀行融資のコンサルをはじめ、事業再生や経営改善のアドバイスも行っている。
また、金融税理士アドバイザーの専任講師としても活躍中。

(株)スペースワン
http://financial-advise.net/
金融税理士アドバイザー講座
http://finance-zeirishi-adviser.com/