月別アーカイブ: 2017年1月

VOL.20 「借入返済の正常化を安易に進めてくる銀行にどう対処したらよいか(その1)」

業績が低迷し、資金繰りも苦しくなり、やむなくリスケの選択を行ったが、絶え間ない企業努力により黒字転換に成功したクライアントが続々と誕生してきております。
私のフォローのみならず、何よりもクライアントの経営者そして社員みんなの努力の賜物です。

「事業の正常化」の基盤が出来てきたら、次に検討すべきは「金融取引の正常化」つまり「銀行取引の正常化」になるのですが、どのタイミングでいつ「正常化」への道に踏み出すのかは、極めてセンシティブな話です。

今回は、正常化を求めてくる銀行との交渉の際に、気を付けておくポイントについて2回に分けてお話します。

◆ すぐに「10年分割返済」を求めてくる銀行

このクライアントでは、黒字転換して2年が経過し、債務超過の解消が来期にも達成できるほどに、収支の改善及び事業基盤の安定化が進んできました。それまでの毎月の返済金額は極力抑え、手元資金の向上を第一義に資金繰りの安定化を図ってきたのです。
1年ごとにリスケの更新を行ってきたのですが、今回はメインバンクより『一気に「正常化」できなければ、稟議が通りません』と言ってきたのです。
正常化の意味とは、「借入金を10年分割返済にて完済できる」ようにもっていくことです。

当社の場合で言いますと、借入金が1億5千万ほどありますので、毎月1,250千円年間で15,000千円返済してくれという話です。(ちなみに当社のキャッシュフローは過去2年で
年間30,000千円ほど生み出す力が生まれてきております)

キャッシュフローだけでいうと決して不可能な数字ではありませんが、このキャッシュフローが10年続く保証はどこにもありません。そして、メインバンクが正常化の話を提案する最大の口説き文句は「新たに借入できるようになるので心配ないでしょう」なのです。

皆様だったら、この銀行の提案にすぐに乗りますか?

◆ 正常化したら新規借入はすぐに出来るのか?

では、銀行の言う「正常化したら新たな借入ができる」とは本当でしょうか?もちろん、嘘ではありませんが、大事なのはいつから借りられるようになるのか?です。
基本的に「返済の正常化」を達成したとしても、「1年間は新たな借入はできない」と考えておいたほうがいいでしょう。銀行は正常化させた返済をまずは継続できているか?を見てくるのが理由です。

そうなると、当面一年間は新規借入無しで返済できるキャッシュフローが生み出せる自信がまずなければいけません。また、経営環境が急激に変化するリスクに備えて、手元資金が十分に確保されているのか?についても慎重な検討が必要です。

そのためには、売上のシミュレーションに基づく1年間の資金繰り計画が必須です。
最終的にこのクライアントはリスケの正常化には今回は踏み切りませんでした。
その理由はどこにあるのか?手元資金はどのくらいまで確保しておけばよいのか?
そして他に気を付けておくべきポイントはどこかについては、次回お話させて頂きます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今後のセミナー情報

■アドバイザー講座 新設講座「実践編」! リリース迫る!

既に9期生を終えまして、6年目に突入する来年から、講座のプログラムをより実践に近づける内容の講座を追加します。
これまでの講座を「基礎編」と位置づけ、新たに「実践編」の講座を新設します。
「基礎編」で融資の体系的な知識を身に着けて頂き、「実践編」で応用できるスキルを身に着けて頂くイメージです。「実践編」では実例を重視し、内容に織り込んでおります。

(なお、「実践編」では「基礎編」の知識があることを前提としております)
「実践編」プログラムは以下の内容で終日2日間コースになります。

第1講座 「会計事務所そして顧問先の切り札となる事業性評価制度」
第2講座 「中小企業庁制定の経営改善計画書」
第3講座 「脱日本型金融時代の運転資金の考え方」
第4講座 「リスケの出口を突破した再生実例」

「基礎編」は4月スタート「実践編」は5月スタートを予定しております。
具体的なスケジュールが決まりましたら、ご案内させて頂きます。
詳細は、下記のアドバイザー講座HPをご覧ください。
http://finance-zeirishi-adviser.com/
(なお、アドバイザー講座HPもリニューアルをかける予定です。)

■「財務・銀行融資研究会(仮称)」の開設企画中

会計事務所同志の横の繋がり、及び財務・銀行融資・資金繰りのスキルアップ
を目的とした研究会を企画・検討しております。
年会費制とし、年4回ほどのセミナー及び年4回ほどのレポートをサービスとし
て内容を詰めているところです。

アドバイザー講座の新設が終わりましたら、こちらの研究会もリリースする
予定ですので、ご期待ください!


徳永 貴則
(株)スペースワン 代表取締役 金融税理士アドバイザー講座主催
写真_s
大和銀行(現りそな銀行)にて、都内を中心に主に法人融資の新規開拓業務を行う。その後、本店融資部・審査部門を歴任。2,000社以上の融資に携わる。これらの経験を活かし㈱スペースワンを創設。銀行融資のコンサルをはじめ、事業再生や経営改善のアドバイスも行っている。
また、金融税理士アドバイザーの専任講師としても活躍中。

好評発売中!徳永 貴則 DVDシリーズ「実例公開!! 「財務と融資」で顧問料をアップさせる秘訣」他!
http://www.zeikai.net/tool/index/3

(株)スペースワン
http://financial-advise.net/
金融税理士アドバイザー講座
http://finance-zeirishi-adviser.com/
ゼイカイネットへ
http://www.zeikai.net/