VOL.55 「経営者保証ガイドラインの3要件」を知ってますか?(1)」

前回、経営者保証の「二重保証」問題についてお話をしましたが、そもそも「経営者保証ガイドライン」って何なの?との声が多いことのも事実です。

そこで、今回は「経営者保証ガイドラインの原則3要件」と言われるものについてお話をさせて頂きます。

▽経営者保証ガイドラインの3要件とは

経営者保証ガイドラインとは「法律」ではなく、あくまで「ガイドライン(指針)」ですので、金融機関に対する強制力(保証人を必ず外しなさい)はありません。

経営者保証ガイドラインには以下の「原則3要件」と言われるものがあり、そこが「無保証人化」への切り口となります。

1.「法人」と「個人」の関係の明確な「区分」「分離」

2.「財務基盤」の強化

3.適時適正な「情報開示」

しかし、この3要件だけではあまりに表現が抽象的過ぎて、具体的に何をしたらよいのかのイメージがつきにくいと思います。

今回は、1の「法人」と「個人」の明確な「区分」「分離」について少しお話をさせて頂きます。

▽会社と社長の「財布」を別にすることが重要

「法人」と「個人」の関係の明確な「区分」「分離」とは、簡単に言うと「お金の公私混同」はダメということです。

たとえば

〇使途不明金が「現金」「仮払金」「貸付金」になっている
〇社長の自宅が会社名義になっている
〇社長の自宅購入のためにローンの頭金に会社のお金を貸し付けている

が挙げられます。

つまり、「お金の流れ」や「資産」を明確に区分しなさいということがここで言いたいことです。

しかし、既に過去に発生しているものは、しょうがないことです。そこでいかに過去に発生したものを改善していくことで認められることができます。(役員報酬にて少しづつでも返済していくことです)

▽事業用資産は「法人所有」にすること

事業用資産とは、「本社」や「工場」「営業車」などがあります。私のクライアントでもいますが、本社の「土地」は経営者個人所有で「建物」は法人所有となっているとガイドライン要件の「入口」では引っかかるケースが多いです。

私のクライアントでも取引銀行から「本社」の所有名義が「法人」になっていない、と言われたケースがありました。

事業用資産については、経営者保証ガイドラインうんぬんの前に「会社経営を持続させる」観点から問題があると個人的には思っております。

それは、「相続時」に資産が相続人に拡散してしまう懸念があるからです。
不動産を持ち分で切り分けなければならなくなると、会社経営にとってはデメリットになります。

ある相続人が「売って現金に変えてくれ」など言い出すと、会社経営にとっては必要な本社の存在が揺らいでしまいます。

ただ資産の法人所有には「資金」が必要となりますので、すぐには取り組めない話です。

次回は、法人所有に簡単にできない場合はどうしたらよいか?についてお話をさせて頂きます。


徳永 貴則
(株)スペースワン 代表取締役 金融税理士アドバイザー講座主催
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大和銀行(現りそな銀行)にて、都内を中心に主に法人融資の新規開拓業務を行う。その後、本店融資部・審査部門を歴任。2,000社以上の融資に携わる。これらの経験を活かし㈱スペースワンを創設。銀行融資のコンサルをはじめ、事業再生や経営改善のアドバイスも行っている。
また、金融税理士アドバイザーの専任講師としても活躍中。

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