VOL.21「借入返済の正常化を安易に進めてくる銀行にどう対処したらよいか(その2)」

前回からのお話の続きになります。リスケ状態を正常化させる際に気を付けておくべきポイントについてお話させて頂きます。

◆ 手元資金はどこまで確保しておけばよいのか

リスケを実施したからには、「返済額を極力抑え、手元資金の向上を図る!」これが私のリスケにおいて重要視しているポイントです。
それはなぜか?「新たな借入が原則できない」からです。
(原則と書いておりますのは、今は「経営サポート保証」のようにリスケ中でも借り入れができる可能性も出ておりますので)

手元資金は大いに越したことがありませんが、私の考え方は

1.まず月商1ヵ月分は最低確保→これでは「正常化」にはまだ足りません
2.次に月商3ヶ月分の確保→ここから「正常化」の検討

を目安にしております。

前回もお話しましたが、ここまで慎重になっている最大の理由は新たな借入ができるまでに1年はかかること、そして今後の経営環境の悪化リスクに備えておかなければならないことです。

◆ 「正常化」させるための他の要件は何か

手元資金の確保以外に、正常化させるために必要な要件はなにがあるのか

1.債務超過を解消できた→解消の目途ではなく、解消できた状態にする
2.当面2年ほどは新たな資金がなくても回せるぐらいの資金繰りが組めること
3.経営環境の変化に対応できる変動費や固定費の改善ができる体制になること

「債務超過の解消」は、新たな借入ができるためには当然のことです。
ただし、決算書等での帳簿上の債務超過ではなく、不良資産等も考慮した実質の債務超過解消が条件になりますのでご注意ください。

次に、新たな借入でできるためには1年間は待たないといけないとお話しましたが、これもあくまで事業が黒字化を維持できているのが条件になるでしょう。つまり2年目に赤字になるリスクも考え置かなければならないので、念のために2年間の資金繰りを見ておいたほうがより安全です。
最後に、仮に再び赤字基調になってしまったとしても、原価低減や役員報酬の削減など黒字化に向けてすぐに経営判断を実行に移せる社内体制を作っておくことが必要です。

◆ 銀行は「正常化」させて楽をしたいと感じる

このようにリスケを正常化させるには、それなりの準備が必要なことが分かって頂けたと思います。それでは、銀行が「正常化」を安易に提案してくる理由はどこにあるのでしょうか?

もちろん、顧客が再び借入ができる状態に早くなってほしいこともあると思いますが、私が現場で感じるのは、「リスケ」を脱して「楽な顧客」にさせたい意識を感じるのです。
リスケを経験した経営者は、借入が出来ないトラウマがなかなか離れないものです。リスケをお願いした際に、色々と銀行から問い詰められた記憶もなかなか消えていないのです。

もう二度とそのような思いをしたくない経営者の気持ちをいかに銀行に汲んでもらえるのか、それは「リスケの出口」の基準を経営者自らがもっておき、銀行に伝えることが一番大切なことなのです。

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今後のセミナー情報

■アドバイザー講座 新設講座「実践編」! 5月より開講決定!!

既に9期生を終えまして、6年目に突入する来年から、講座のプログラムをより実践に近づける内容の講座を追加します。

これまでの講座を「基礎編」と位置づけ、新たに「実践編」の講座を新設します。
「基礎編」で融資の体系的な知識を身に着けて頂き、「実践編」で応用できるスキルを身に着けて頂くイメージです。
「実践編」では実例を重視し、内容に織り込んでおります。
(なお、「実践編」では「基礎編」の知識があることを前提としております)

「実践編」プログラムは以下の内容で終日2日間コースになります。
第1講座 「会計事務所そして顧問先の切り札となる事業性評価制度」
第2講座 「中小企業庁制定の経営改善計画書」
第3講座 「日本型金融 脱却時代の運転資金の考え方」
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「基礎編」9期生は4月7日、8日スタート
「実践編」1期生は5月12日、13日スタートの予定です。
(既に実践編」は2名の先生にお申し込みを頂いております。)

詳細は、下記のアドバイザー講座HPをご覧ください。
http://finance-zeirishi-adviser.com/
(なお、アドバイザー講座HPは今月リニューアル中です)

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5月16日 14時よりエッサムホール(神田)にてセミナーを行います。
日本型金融とは、
1.保証協会依存
2.担保・保証依存
3.決算書依存
4.約定返済付融資依存
と大きく4つの特徴をもっておりますが、4月より本格的に1~4への依存を脱却させる動きが加速してまいります。

金融行政の動きと、具体的に顧問先との現場ではどのようなアドバイスを行ったら良いかについてお話をさせて頂きます。
銀行融資の大きな変革期のお話で、知っていないと困る内容だと思いますので是非ご参加ください。
詳細なお申し込み方法は、確定次第ご案内させて頂きます。

■「財務・銀行融資研究会(仮称)」の開設企画中

会計事務所同志の横の繋がり、及び財務・銀行融資・資金繰りのスキルアップを目的とした研究会を企画・検討しております。年会費制とし、年4回ほどのセミナー及び年4回ほどのレポートをサービスとして内容を詰めているところです。
アドバイザー講座の新設が終わりましたら、こちらの研究会もリリースする予定ですので、ご期待ください!


徳永 貴則
(株)スペースワン 代表取締役 金融税理士アドバイザー講座主催
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大和銀行(現りそな銀行)にて、都内を中心に主に法人融資の新規開拓業務を行う。その後、本店融資部・審査部門を歴任。2,000社以上の融資に携わる。これらの経験を活かし㈱スペースワンを創設。銀行融資のコンサルをはじめ、事業再生や経営改善のアドバイスも行っている。
また、金融税理士アドバイザーの専任講師としても活躍中。

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