VOL.10 業績不振企業に対するマイナス金利政策の影響は

990f4c7242fa7b1fe13743a57e2ff0b9_s2月から日銀のマイナス金利政策がスタートし、皆さんを取り巻く金利環境も影響が出始めております。身近なものとしては、預金金利の引き下げ、MMFの募集停止、住宅ローン金利の引き下げなどの動きが出てきております。企業取引においても、資金調達コストは下がってきており、借入金利や社債調達コストにも動きがみられております。

弊社に対して質問が多い話で、現在リスケジュールをしている再生途上の企業などの借入金利にはどのような影響が出るのかについて、今回はお話させて頂きます。

①既存の借入金利が下がることはない
最初に結論から申し上げれば、「再生途上企業の金利が下がることはない」と言えます。いかに市場の金利が下がれども、債務者の信用力が上がる(信用格付けが正常先になる)ことにならなければ、金利の引き下げの理由にならないのです。また、既存の借入金の金利を引き下げることは正常先であったとしても、なかなか難しいものです。

あくまで、正常先のケースですが、他の銀行に肩代わりをされる恐れがあるようなケースとして、取引防衛のために稀に既存金利を引き下げて対応することもあります。要注意先以下の企業に対して、他の銀行が積極的に肩代わりのセールスをしてくることは、なかなかないことからも、既存金利の引き下げの可能性はほぼないと言ってもいいでしょう。

②改善未達の企業は逆に金利が上がる
リスケジュールを申し出る際に、改善計画書を提出して再建を行っていると思いますが、提示した計画値よりも、かなり下回る実績しか残せていない企業に対しては、金利を逆に引き上げる動きも考えられます。
その根拠として、赤字をいまだに連続して計上している企業の信用力はより低下していくことになり、銀行としても貸倒れリスクが上昇してしまうことになります。そのリスクの対価として金利を引き上げることになるのです。

③金利引き下げ分を元金に充当する交渉は可能
では、金利を引き下げる手法はないのか?と言われると、ひとつあります。それは、元金と利息を合計した返済額は変えないが、金利を引き下げた分を元金に充当するやり方です。
これは、あくまでリスケを実施している企業に対する方法ですが、再生途上の企業に対して銀行は少しでも元金の返済スピードを早めたい意向のもとで行われます。この方法は多くの交渉事例がありますので、是非銀行と相談する価値があります。

マイナス金利の影響で銀行の正常先に対する貸し出し利回りは低下せざるを得ず、銀行の収益が低下することは必至です。そのような環境下で、業績不振企業に対しては、しっかりと貸倒コストに見合う金利を確保しなければならないとの考えが、これまで以上に強くなってくると思います。

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■■ 編集後記
4月6日にエッサム様主催で「顧問料UPに繋がる資金繰り管理術」と題して、資金繰りアドバイスや管理をテーマに講演をさせて頂きます。
経営者の一番のストレスは「資金繰り」にあります。
資金繰りコンサルタントとして9年間のノウハウをお伝えさせて頂く機会を設けて頂きましたので、ご興味のある方は是非ご参加頂けたらと思います。


徳永 貴則
(株)スペースワン 代表取締役 金融税理士アドバイザー講座主催
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大和銀行(現りそな銀行)にて、都内を中心に主に法人融資の新規開拓業務を行う。その後、本店融資部・審査部門を歴任。2,000社以上の融資に携わる。これらの経験を活かし㈱スペースワンを創設。銀行融資のコンサルをはじめ、事業再生や経営改善のアドバイスも行っている。
また、金融税理士アドバイザーの専任講師としても活躍中。

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