「利益」の源泉は「売上」にあることは間違いないのですが、「売上UP」=「利益UP」の公式は絶対ではありません。
今回は、私のクライアントのケースで、「粗利改善策」として「売上を追わない勇気」をもって歩んできた2年間の過程をお話します。
◆ 売上目標だけを追うと仕入がめちゃくちゃになる
そのクライアントの業態は「卸売業」です。売上を作る源泉は「仕入れた商品」になります。もちろん、仕入れた「在庫」をもとに「売上」を作ることになりますが、仕入方法が営業担当の従業員任せになるとどうなるでしょうか?
以前、同社では毎月の目標値として「売上高」を設定しておりました。
営業担当は自らに課せられた「売上目標」を達成するために、常に鮮度の高い商品を仕入れ、在庫には目もくれず売上目標を追っていました。その結果、仕入のコントロールが効かずに、粗利の大幅な低下を招く状態でした。
さらに、仕入単価を下げるために「ロット数」を大きくとり、結局は、売り切れていない「在庫」の山が嵩んでいたのでした。また、取り扱い品数も300を超えるアイテムがあり、商品管理のパート、アルバイトもかなりの人数を確保しなければ、出荷が間に合わない事態になっていたのです。
営業担当からすれば、「仕入総量」や「在庫数」なんかは関係ない!といった空気になっていたのです。
その原因は「売上高」だけを負わせていたことが原因だったのです。
同社の経営者も「うすうす」気づいていたのですが、なかなか具体的な改善策が浮かばずにずるずると赤字計上を続けていたのです。
<売上を追いかける負のスパイラル>
目標 「売上を追いたい」
→「新しい仕入れしないと」
→「このくらい売れるから100ロットでも仕入れてしまえ」
→「在庫? 知らない」
結果「仕入増加、在庫の山」
◆ 仕入担当の設定と「仕入」コントロール
その状況を打開するために、経営者自らが仕入決裁者となり、仕入のタイミングや商品数の管理をお願いしました。また営業担当には「売上」ではなく「粗利」を目標にすることに変更し、「仕入額」と「在庫高」の数値を把握させるような管理手法にしました。
言葉で言うのは簡単なのですが、この手法が定着するまでには2年の時間を要したのです。
今は、「売上高」はアイテム数と不採算取引先数の整理を行ったことで、3割程度減少しておりますが、「粗利額」は逆に3割増加するようになってきました。在庫数も削減していくことで、パート、アルバイトの従事時間も削減ができ、人件費の削減にまで至ることができたのです。
<粗利を追いかける好循環>
目標「粗利を追いたい」
→「仕入窓口を一本化させる」
→「発注見込み以上のロット数で仕入れをしない、小ロットでコスト嵩んでもOK」
→「在庫数、品目数が減少してくる」
→「在庫管理のスタッフの人件費減少」
結果「粗利とコスト削減につながった」
この文章だけですと、いとも簡単に書いてあるように見えてしまいますが、特に「卸売業」の生命線は「仕入」と「在庫」です。
「卸売業」の皆様で、利益や資金繰りで悩んでいる方がいましたら、是非ご参考にして頂けたらと思います。
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