VOL.29「『P/L改善』よりも『B/Sの改善』が大事です!(その2)」

前回からの続きになります。
B/Sの着眼点についてお話をさせて頂きます。

資金繰りの改善は「損益の改善」と同時に、「資産の見直し」を行っていくことから始めます。
今回は資産勘定の主な科目ごとのポイントについてお話します。

▽まずは運転資金を構成する「売掛金」を見てみよう

前回にも出てきました「運転資金」算出する式は

「売掛金」+「棚卸資産」-「買掛金」

ですね。

この式を構成する「売掛金」と「棚卸資産」に着目します。
※今回は「売掛金」の説明です。棚卸資産は次回お話します。

◎「回収サイトの短縮」

売掛金については、回収サイトが取引ごとにどうなっているかをまず見ます。

回収サイトが長くなれば、この科目の金額は大きくなりますし、回収サイトが短くなれば科目の金額は少なくなります。

つまり、資金繰りの観点からは、「回収サイト」を少しでも短くし、運転資金の金額を少なくすることが必要です。

とはいえ、相手先もあることですし、いたずらに相手の支払いを早めてほしいと言えば「信用不安」を招く可能性もあることから、交渉は慎重に行う必要があります。

受注先が支払いを早めてくれるためには、相手にもメリットが必要になります。

そこで値引きを入れることにより支払いを早めてもらう方法があります。
粗利の低下を招くことになりますが、「資金繰りの窮地を脱するため」そして「不用意に高い金利の借入を起こさない」ことを天秤にかければ、決して悪い手段ではないと思います。

値引き率は5%、10%などにする必要はなく、2%ほどでもいいと思います。相手に対して、少しでもメリットを形だけでも与えることが大切です。

○建設工事業は「前受け金」「着手金」

建設工事業においては、「前受金」「着手金」をもらう癖をつけておくことも必要です。受注はしたものの、先に「材料費」や「人件費」の負担が大きい業種ほど前受金については、受注前に相手先に説明しておくことが大切です。

◎受注先の分散

また、受注先の分散を図る営業方針も大切です。売上はあるものの、特定先に集中していれば、回収サイトの短縮交渉も選択肢が少なくなります。

企業継続の観点からも特定先への依存は、信用リスクの問題もあることから、取引シェアは1社あたり20%を上限とするぐらいに分散を図って下さい。

上記の内容はどれも「当たり前」のことではありますが、資金繰りが苦しくなっている経営者は「売掛金」を見る余裕がなくなっている方が多いのが私の経験から言えます。

「資金繰りが苦しい!」=「借入をしなきゃ!」

とすぐに考えるのではなく、まずは「運転資金」を減らすためにはどうしたら良いのか?を考えてみると資金繰りを好転させるヒントが眠っているはずです。

次回は「棚卸資産」の着眼点についてお話をさせて頂きます。

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金融庁では、こうした現状を打破するため、従来の「決算書依存」型の融資からの“脱却”を意図した政策転換を図っていくことを昨年10月の金融行政方針において決定しました。
そこで、金融庁が目指す“脱日本型金融”とは何か。銀行融資の概念を変える有利な運転資金の調達法をわかりやすく解説しました。

[収録内容]
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2.脱日本型金融」のスタートは「事業性評価制度」にある
3.運転資金の種類と返済原資を理解する
4.金融庁の意向を金融検査マニュアルから読み解く
5.これからの運転資金の調達方法
6.最近、力を入れている「ABL」とは何か
7.保証協会借入が大きく変わる!
8.企業の成長ステージに応じた調達戦略とは

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徳永 貴則
(株)スペースワン 代表取締役 金融税理士アドバイザー講座主催
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大和銀行(現りそな銀行)にて、都内を中心に主に法人融資の新規開拓業務を行う。その後、本店融資部・審査部門を歴任。2,000社以上の融資に携わる。これらの経験を活かし㈱スペースワンを創設。銀行融資のコンサルをはじめ、事業再生や経営改善のアドバイスも行っている。
また、金融税理士アドバイザーの専任講師としても活躍中。

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